ニコルソン。ドワンゴが作った奇跡のアプリ。nanaとの比較

あなたはアプリで人生が変わったことがありますか。

僕にはあります。令和となった現代では、当然のようにスマホを携帯する社会になりました。まだ普及しきっていないスマホ黎明期の当時、僕が出会ったひとつのアプリケーション。

ある日、インストールされたそれがきっかけで 現実の生活 まで変わってしまったのです。今回はそんな僕の生活を変えた、失われたボイスアプリ「ニコルソン」に関して綴ろうと思います。

ニコルソンとは

ニコルソンはニワンゴが開発し、2011年9月12日にドワンゴが公開した、声でつながるスマートフォンアプリです。iPhone版のみ先行配信しており、同年12年1月にAndroid版が公開されました。そして2013年5月31日に全サービスを閉鎖しました。

利用にはニコニコ動画のアカウントが必要で、基本無料で使えるアプリでした。主な機能にはリアルタイム用のライブと留守ログと呼ばれるテキストと同時に音声が録音できる投稿ツールがあり、音声コミュニケーションアプリとして存在していました。

な機能

ライブ機能

同期コミュニケーションとなるライブ枠は、動画機能の無いツイキャスに近く、ラジオのような感じで最大5人まで同時に音声放送ができました。それ以外のユーザーはテキストチャットで参加していました。フォロワーがライブを始めるとプッシュ通知が来るので、すぐに参加することができました。

しかしアプリ内で50枠までしか同時にライブができず、オチルソン(枠が落ちる)などのバグも多くありました。後に100枠まで可能となりますが、30分間で終わってしまうので次枠が取れないこともありました。24時間ライブという謎機能も一瞬出ましたが利用者がおらず削除されました。また、基本的に勝手に音声参加できるために荒らし行為をする乱入者もいたりしました。

この機能が最もアプリの関係者の距離感を近くさせたものだと断言します。

留守ログ(るすログ)

非同期型のコミュニケーションである留守ログ(るすログ)は音声とテキストによるメッセージが投稿できました。初期には他のユーザーから「いいっ」「がんばれ」「わかる」といった評価ボタンがあったようです。後にいいポチと呼ばれる「いいっ!」のみに統一されます。

また、Twitterのリプライのような感覚で音声で返事を返すといったことができました。他にもこの留守ログにはTwitterのようなタグ付けができたり、気に入ったログをマイリストを作ってお気に入りできたりしました。いいポチとコメント、タグはユーザーの交流を盛んにさせていました。

投稿する時にはTwitterやFacebookに同時投稿できたりするshare機能(2013年3月1日を境にこの機能が封印される)と、Twitterのリツイートのように留守ログで拡散するshare機能もありました。

楽しめる遊び方

2019年9月現在では、nanaというアプリがライブ機能(コラボ配信も予定中)や音声投稿ができ、よく似ているものとなっています。しかし、ニコルソンにはこのアプリと比較すると、違う点が多々ありました。その特徴的な機能を紹介します。

ランキング機能

まずランキング機能。みんなの流行を把握したり、誰もが憧れる注目のユーザーが確認できました。ランキングには趣向が凝らされており、HOTランキングという今、最も熱い、留守ログを確認できるコーナーがありました。これぞニコニコ動画のアプリ番だと思わせるような出来栄えでした。

HOTランキングでは1時間あたりの再生数・いいっ!の評価数・お気に入り数等で評価され、人気となるログを並べていました。恐らく、お気に入り>いいっ!>再生数として数値化して評価しており、対策として同じユーザーが何度再生しても、ランキングでは1としかカウントしない機能もありました。人気のタグも表示されるのでこの画面を開いていたユーザーは多いと思います。このランキングに載るために投稿時間を工夫した方々もいました。

そのランキングのどこがいいの?と言われると上画像の王冠の横にある赤文字が特徴になります。かつては最高何位だったかと、ランキングの上下の動きまたは変動なしの表示、赤文字の右側にある実際のスコアとなった再生数・いいっ!数・お気に入り数というのがその区分された時間帯によって表記されるので、リアルタイムに変動を感じることができ、ユーザーのアプリ滞在時間を延ばしたものなのだと思われます。(2019年9月16日追記)

さらに、ランキング機能はカテゴリ別に調べる機能もあり、デイリー・週間・月間に加えて、再生数・いいっ!・お気に入り別に検索できました。ユーザーはこれを話のネタにしたり、聴く指標にしたりしてアプリを楽しんでいました。

プロフィール

何気ないプロフィール画面も実はとっても重要でした。

画像のように、このユーザーがどれだけ投稿しているのか、ライブは何回やっているのか、フォロワーが何人いるのかを知るところはまさにTwitterのようだと思います。その詳細の真下にはプロフィール文章を長文で書くことができ、さらにその下に自分のお気に入りフォルダが表示されていました。

長文は折りたたみでなく全表示のままで、お気に入りフォルダも長い名前で表示できたのでユーザーの興味やオススメがわかりやすくなっていました。お気に入りは後に紹介する、プレミアム会員(有料会員)でないと一定数(100)しか登録できず、ほとんどが一般会員であったために最大の評価のように扱われてました。

プレミアム会員

プレミアム会員は、ニコニコ動画の有料会員(特別会員)を示します。月額540円(税込、2019年9月現在)で一般会員より優遇された機能を使うことができました。新規入会とともに2013年3月1日をもってこのプレミアム会員になれなくなりました。優遇内容は以下のようなものでした。

・ライブで一般会員より枠を優先的に確保できる(アプリ内で100枠しかないため)
・初期は留守ログを一般会員(15秒)より長く録れるようになる(60秒に延長)→のちに超会議とコラボして全会員5分に統一される
・フォロー上限が無制限になる(一般会員は上限100)
・表示できるランキングが拡張される
拡張されたランキング詳細
るすログランキング
一般会員:50位まで
プレミアム会員:300位まで
ライブホストランキング
一般会員:25位まで
プレミアム会員:100位まで
タグランキング
一般会員:50位まで
プレミアム会員:100位くらいまで

プレミアム会員が開くライブ枠で、音声参加してから参加が終わったのに上にサムネが残ってしまう「遺影」と呼ばれる現象等も親しまれたバグの1つでしょうね。(2019年9月16日追記:一般会員で確認したことないのでこのように書いています。)

その他の特徴的機能

マイルーム

自分とフォロワーの留守ログ投稿をチェックできる部屋でした。しかし、Twitterと感覚は少し違い、主に音声投稿が流れ、チェックする場所となっていました。気軽に文章のみを投稿している人は少なく、音声を投稿する人が主でした。なお、フォロワーの個人宛のリプライのようなログもここで表示されたため、身内での動向をチェックするような意味合いもありました。

フロア

恐らくすべてのユーザーの留守ログがここに流れていました。ニコルソンではフォロワー同士の結束が強く、マイルームを主に使っていたのではないかと推測されます。(違っていたら教えてください)

マイるすログ

自分の投稿した留守ログをまとめて確認できるところです。恥ずかしい歴史を削除するために存在する機能だと思われます。タグ付けするのに便利な部屋でもありました。

nanaと異なる点と同じ点

 

最後に、これまでに出ていない機能のうち、現在のnanaとニコルソンで異なる点や同じ点をピックアップしてみようと思います。

・ライブ以外で他人とのコラボ機能がない

ニコルソンでは他人の録音した音に音を被せることができず、基本的に1人で投稿するものでした。技術のある者のみがコラボ配信できたため、誰かと同時に録音している人は特別感がありました。そのため、文化的違いといえばニコニコ動画のカラオケ動画と同時録音が多かったことも挙げられます。誰かが伴奏して、ということもほぼありませんでした。

・音声編集機能がない

nanaでは録音した音にエフェクトをかけることができます。しかしニコルソンは録音された音のみでした。さらに、たまにロボルソンといったロボ声が生じるバグが発生したりしていました。

・ニコルソンにはコミュニティ機能が存在しない

ニコルソンはグループを作る機能がなく、お互いのプロフィールやタグ、名前でそれを示していました。ちょうどLINEが普及していたこともあり、ユーザー同士はLINEのグループチャットをコミュニティ代わりに使っていたりもしました。

・運営やユーザーの設けたジャンルや企画がある

ニコルソンでもお題や質問コーナーを運営が作成していました。ただ投稿数がめちゃくちゃなことになっていて整理つかないのはどちらも同じでしょうか。実際には、ニコルソンではそんなに運営が企画するものは数多くはありませんでした。もちろん、ユーザーが中心となって参加するお祭りのようなイベントもたくさんありました。

・公認のオフイベントがない

ニコルソンには運営公式のオフラインミーティング型イベントがありませんでした。nanaのイベントも実際参加できる人の数は相当少ないものですが、もしニコルソンで行われていたら活性化されていたのではと思われます。

どちらのアプリもユーザーが言葉を頻繁に交わすにはTwitterを使っている点も近しい点でしょうか。

なぜサービスが終わったのか

これに関しては事実と推測を交えて少し書こうと思います。ニコルソンの終了が発表されたのは2013年3月1日、約1年と8ヵ月間僕らユーザーを楽しませてくれました。けれども、この終了は何の前触れもなく唐突に発表されました。

日本すべてのユーザを巻き込んで楽しめるサービスにするためには、ユーザ数が少ないというのが現状であり、検討を重ねた結果、サービスを閉じ一から考え直す必要があると判断しました。
サービス終了発表の同日23時に終了説明ライブが行われましたが、ユーザーの多くは配信を続けてほしいと言い続けました。HOTランキングも残してほしいログで占拠されていたのを覚えています。
ニコルソンは何を目指していたか:
より多くの人にニコルソンを使ってもらい,より深い友達関係をニコルソンで築くこと。いい側面としていろんな文化が生まれて,いい友達ができた。イケボとかカワボとかの友達。声で繋がるサービスだから喧嘩も当たり前だったけど,結果とっても楽しいサービスになった。だけれど,今のユーザー数じゃだめ。運営は日本全体を変えるアプリにしたいと思っているから。
運営の方々の目指す目標に届かなかった、ということでしょう。
閉鎖理由:
不具合が多い。ユーザー数が伸び悩んでる。今後日本中の全員,誰もが愛せるサービスになるかというと怪しい。だから仕切り直す上でも閉鎖する。プレミアムチケットの関係で3ヶ月間はまだサービスを続ける。
仕切り直しした結果生まれたのはニコキャスだったのでしょうか。
今閉鎖する必要はあるか:
今のままでは既存のインターフェイスをいじるだけになる。ゼロベースで考えられないから今あるアプリから大きく変えられない。『不具合のサポートに上手に対応できないアプリだからユーザーに失礼だと考えている。』
よって閉鎖する必要がある。閉鎖することはもう決定事項。
ユーザーに失礼というのはこれから増やしたい新規ユーザーに向けてだったのでしょうか。既存ユーザーの僕らは満足していた人が多かったようにも思います。
ユーザーの反対意見について:
そのような意見は何も汲み取ってない。これは総責任者の責任。10月から不具合を修正したり,荒らし対策をしたりしたが,目立った成果は無し。頑張ってきたオチルソンや音無しの改善の結果は出てない。結果出したかった。せめてオチルソンとか,るすログの音声をクリアーにしたかった。
不具合が主な理由という公式発表は、事実、それも本当なのだと思います。運営がユーザーに満足してもらうためにと留守ログの録音時間を長くしたりしてくれたり努力もしていたのですが、ユーザーを欲しいところまで増やせなかったのでしょう。
だけれど今思うと、nanaも現在赤字が続いていると公式発表があるあたり、有料会員を増やさないとサーバーを維持できなかったのかもしれませんね。僕の会社と同じGMOサーバーを使っていたのなら維持費も運営費も、もちろんかかりますし。
運営側では鈴木健太という方が表立ってずっと行動していました。閉鎖後には似たようなアプリのシャベルソンというものを作るという噂も立ちましたね。

まとめ

もっと細かい設定などありましたが、省略します。以下まとめ。

ニコルソンはドワンゴが過去に提供していた音声コミュニケーションアプリ

ライブ配信音声投稿ができ、ユーザー同士の距離感が近かった

ランキング機能がニコニコ動画のようで活性化させていた(と推測)

ユーザー数が足りずサービスを唐突に終了させた

ニコルソンは留守ログでTwitterのようなやり取りをした上で、ライブでフォロワー中心に集まるため、同アプリ内限定ということもあってお互いの距離感はかなり近いものでした。無くなって非常に残念ですが、記憶している方々もいる、ということでブログの記事にさせていただきました。

参考・引用サイトまとめ

ニコルソン(ニコニコ大百科)

音声でニコニコ的ライブ/非同期コミュニケーション ドワンゴがiPhoneアプリ「ニコルソン」

ニコルソン(Android用紹介記事)

時を過ごし生きるを感じる(スマホアプリのニコルソンでの活躍)

*【非公式】ニコルソンプレミアム会員特典【調べてみた】

ニコルソン、5月31日でサービス終了【スマホアプリ】

ドワンゴ、“声でつながる”アプリ「ニコルソン」終了

ニコル調査隊

感想

本当はここをめちゃくちゃ書きたかったです。しかし現時点で5000文字オーバーなので控えます。ニコルソン家族(ニコル家族)とか、呼び出し枠とか、なんかユーザー間で話題になった事件とか、他にもいっぱいいっぱいありました。

実は数日前、7年前にこのアプリで出会った女の子と初めて会ってお食事に行きました。それで、そのことを書きたくなって記録的に文字を起こしています。記事のために昔のスクショを漁ってると当時の甘酸っぱい出来事や悔しいこと、人を傷つけたことや傷ついたことがいっぱい出てきました。

博報堂メディア定点調査2018 pdfより

当時のスマホ普及率から行くと、nanaみたいにユーザー数800万人突破なんてならなかったでしょう。また、ドワンゴのニコキャス3日で閉鎖もニコルソンに関連しているのではないかなーって思います。

タイトルの奇跡をここで回収しようと思ったけど、今の自分があるのはこのアプリのおかげって人、きっと他にもいると思うんです。それはまた気が向いたらどこかに記すことにします。今でもニコルソンは、人と人を繋ぐ奇跡のようなアプリのままだと思います

僕に青春をくれたスマホアプリ、ニコルソンの記事でした。

追記:ボカロ歌合戦3では僕は4位のふれあい動物園の2番手でした。個人では200を超えるあたりが限界だったけれど、なにより仲間と協力して楽しめるのが本当にしあわせな時間だったと思います。

最新情報をチェックしよう!