無職転生あらすじ・ストーリー・登場人物紹介【アニメ化決定記念】

なろう系小説の流行を生み出した作品といっても過言ではない「無職転生 – 異世界行ったら本気だす -」がついに2020年にアニメ化です。

原作を知らない人のために、重要な部分に関してのネタバレを回避しながら、どんなストーリーなのかを感想を交えて紹介していきます。

なろう系とは

無料小説投稿サイトの「小説家になろう」に投稿作品を「なろう系」と呼びます。投稿される作品は主に「現実世界のつまらない日常から飛び出して、異世界や超能力、ハーレム、主人公無双物語等のファンタジー要素で非日常を過ごす」ような傾向が多いことから、こういったストーリーの要素を含むものを指し示すこともあります。

無職転生はその代表作だといえる作品です。

無職転生とは

「無職転生 – 異世界行ったら本気だす -」は、小説家になろうで2012年9月に連載開始し、2015年4月3日23:00に完結した作品です。略称は「無職転生」で、作者は「理不尽な孫の手」さんです。原作ではR15指定されている小説となっています。

この作品の最もすごいところは、小説家になろうで2013年10月から2019年2月まで、5年4ヵ月(64ヶ月)連続、ファンタジー部門の総合評価において【累計ランキング一位】に座していたことです。この記事が投稿された時点でも現在二位を守っています。

無料で読める原作から派生し、漫画での連載は2014年10月から始まりました。アニメ化の放映日程が発表された2019年10月18日時点で、書籍化された小説も含めると、シリーズ累計発行部数が400万部を越えている大人気作です。また、本家小説家になろうでは、感想の数は31,555件もあり、本編だけでの合計文字数は 2,829,292文字という驚きのボリュームになっています。

王道の異世界転生を踏襲したストーリーですが、家族愛がテーマとなっており、一人の人間が世に生誕してから死ぬまでを描いたヒューマンドラマのような大河小説です。よく成長物語と紹介されていますがあえて、「未熟である一人の弱い人間が生涯を終えるまでを一生懸命、生き抜いた物語」と表現したい名作です。とても泥くさく、そして一筋縄ではいかない厄介な人生を本当に上手に表現したお話だと思います。

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ストーリー紹介

©2012 理不尽な孫の手/シロタカ/フジカワ ユカ/石見翔子/KADOKAWA

序盤ー人生の終わりー

「やり直したかった人生を、もう一度異世界で!!!」

学生時代のイジメが影響で、34歳になるまで無職のニートだった主人公。両親の葬式に参列しないことがきっかけで兄弟から部屋着のまま家から追い出され、そのままトラックに轢かれて死にます。

お世辞にもいい性格とは言えない他人への嫉妬に溢れた、ねじ曲がった根性の代表的クズのような主人公です。でもこれは失敗した人の代表のような存在で、憐れみも感じます。イジメを受けた人ならなおさら、この捻くれた性格も理解できるのだと思います。しかし死ぬ直前に見せた最後の優しさは、何よりこの人間らしさ(主人公らしさ)を象徴しています。

俺は34歳住所不定無職。
人生を後悔している真っ最中の小太りブサメンのナイスガイだ。

プロローグより引用

初期-新たな人生の始まりー

死んだはずの主人公は気が付いたら生まれたばかりの赤子となって、剣と魔法の異世界へ転生してしまいます。ルーデウス(愛称:ルディ)という新たな名前を父親パウロ・グレイラットと母親ゼニス・グレイラットに名付けられ、愛情をいっぱい注がれながら成長していきます。侍女のリーリャ、家庭教師のロキシー、幼馴染のシルフィエットと成長していく幼子の成長物語です。

もし赤ちゃんのころから大人の頭脳があったら・・・。無職転生はそれをよく描いた物語です。安易に主人公が強くなれないことこそが、最大の魅力の1つですね。小さい頃に尊敬する人に出会えたことも、努力を継続することも、二度目の命だからこそ純粋な気持ちになれるのだと思います。また、垣間見えるゲスい考えは男の煩悩そのものだと言えるでしょう。ルディという名前で呼ばれることの多い、温かさ溢れるパートです。

「そういや、名前を聞いてなかったな。俺はルーデウス」
「シル…フ…―――」

小声でぼそぼそというので後半がやや聞き取りにくかったが、シルフか。

「いい名前じゃないか。まるで風の精霊のようだ」

第七話「友達」より引用

少年期ー苦労と出会いー

資金稼ぎのため少年ながら一人で家庭教師をするようになるルーデウス。貴族の娘エリスや優秀な剣士ギレーヌらを中心とした勉強生活が始まります。充実した生活を送っていたのですが、物語は10歳の誕生日を起点として大きく動いていくのでした。

間違いなく濃密で幸せな時間の1つです。人に教えることの難しさや、人から教わることの多さが入り混じる思い出の多い生活が描写されています。わがままばかりでは人は生きていけないことを学ぶことができます。そして、平穏が何より一番なんだということを感じることができるパートでもあります。この時間が無ければ、ルーデウスは教えることに対して苦労知らずになっていたかもしれません。

「そうよ、ルーデウスは凄いのよ!」

なぜかエリスが胸を張って答えていた。
いいぞ、もっと言ってくれ。
俺は褒めて伸びるタイプだからな。フハハハハ!

第十六話「お嬢様は十歳」より引用

冒険編ー不器用な生き方ー

忌み嫌われるスペルド族のルイジェルドと出会い、エリスと3人での冒険が始まります。ルイジェルドの通り名「デッドエンド」をパーティーの名前として、堅物とわがままと捻くれ者3人の団結力高まる、長い旅の生活を送ります。この旅はすれ違いや、危険、苦い思い、救助、誤解等を経験するような決して楽しいだけではない大冒険です。

登場人物は誰もが完璧ではありません。むしろ欠点だらけです。それを補い合うこと、人はお互い支え合って生きていく姿がここにはあります。大人であるはずのルイジェルドとエリスの二人にルーデウスはたくさん教えて、それでたくさん教わるパートです。絆が深まっていく汗臭い青春時代はここにあります。

「は、はじ、はじ、はじめ、て、お、おめにかかります。
え、え、エリス・ボボ、ボレアス……グレイラットです!」

(中略)

「エリス・ボボボレアス・グレイラットか。
知らない間に、人族はおかしな名前を付けるようになったな」

第二十一話「スペルド族」より引用

帰郷編ー再開と別れー

旅路の多くの出会いの中で、父親のパウロや侍女リーリャらと再会をします。ここでの親子喧嘩は必見です。旅の途中で出会っていたパウロの旧友のギースの仲介で仲直りする等、人に助けられるような人間関係を深く描いています。後の親友、王子ザノバとの出会いや強敵オルステッドとの戦いを経て、ルーデウス一行は帰郷するのでした。

夢のような冒険のさなか、残酷な現実を目の当たりにするような展開です。ルーデウスの妹2人との関わり合いも複雑で、何事も思ったようにいかない人生を疑似経験させてくれます。誤魔化すことの多い主人公ですが、ちょこちょこ素が出たりして隠しきれないところがまた人間らしく、共感できると思います。長い旅を共にしたルイジェルドとエリスとの別れはなんとも言えない切なさを感じます。ルーデウスはここで貴重な体験をすることで、次のステージへ進むことになります。

「仕方ないだろ!
何もしらない場所で!
誰も知っている人がいなくて!
それでなんとかここまできたんだ!
なんで責められなきゃいけないんだよ!」
「……てめぇなら、もっとうまく出来ただろうが!」
「できねぇよ!」

第四十六話「親子喧嘩」より引用

青春学園編ー運命の特別生ー

青年期になりルーデウスは孤独な生活を通じ、とある事情から研究したいことがありラノア魔法大学へ入学。ここでは数多くの先輩、同期、後輩、外来人との深い関わり合いがあります。楽しいこともたくさんあれば、面倒くさいこともまたたくさんある波乱の生活。意外な人同士が恋仲になっていたり、師匠になってしまったり。ハチャメチャでドキドキな青春の1ページのようなパートです。

知識の大学、というより高校生らしいストーリーです。番長がいたり、貴族のお偉いさんがいたり、ツンツンの男の子や女の子がいたりと学園ものになっています。無職転生特有なものは、これまでの伏線やこれからのお話の中心となるような部分になるところです。少し後の話になりますが、妹たち姉妹との兄弟としての関わり合いが描かれる家族間のやりづらさも見所です。

「ふふ……ないしょ」

フィッツ先輩ははにかんで笑った。
……なぜこの笑顔を見ると胸が高鳴るのだろうか。

第七十一話「及ばぬ力 後編」より引用

結婚編ー失うものと得られるものー

ルーデウスは結婚した後に、迷宮都市ラパンへ行くことになります。ここでの戦いは無職転生を語る上で、決して忘れてはいけない出来事だと思います。無事戻ってきてからは何気ない日常を送る平和な日々が続くことになります。子どもが生まれたり、先輩たちが卒業したり、平穏が戻ります。それも束の間、学友のナナホシがかかっている病気を治すためにまたルーデウスは奔走しはじめるのでした。

家族とのいざこざや、家族のありがたみを感じる無職転生ですが、ただの幸せな家庭ではありません。こうなるはずじゃなかった、という失敗や二度と取り返せない事態に悔いてどうにもならなくなることも盛り込まれています。いわゆる、トラウマがこの話には眠っていて、嫌な記憶に立ち向かう術を教えてくれます。読者には断っておきますが、そういうことを推奨しているわけではありませんので誤解の無いようにお願いします。

「先生」
「はい」
「ありがとうございました」

また、ロキシーに助けられてしまった。
感謝をしてもしきれない。

第百二十七話「前を向いて」より引用

決戦編ー命をかけた戦いー

ここが最大の山場です。ルーデウスの人生を変える大きなイベントが待ち構えています。最強の敵オルステッドとの戦い、そして次々と現れる強敵たちとの出会いと死闘・・・。ルーデウスは自分の家族を守るためであれば、なんでもします。プライドも恥もすべて投げ出して生きるその様子が一番かっこいい姿です。

ここで出てくる強敵はすべて格上のオールスターのようなものです。苦戦しかなく、無事で勝利することのほうが珍しいほどです。後半部分は各王国との関わりや、今まで出会ってきた人物中心となるお話が多く、本番の戦闘のための長い準備期間も描かれています。ルーデウスの妹アイシャの以下の名台詞と、それを内心で否定するルーデウスの言葉から状況のすべてが読み取れます。

「なんか、お兄ちゃんってさ、英雄みたいだよね。
回りが失敗して窮地に陥ってもさ、
ある日突然、全てを解決して戻ってくるんだもん」

馬鹿な事を言う。
俺みたいに無様な英雄がいるものか。

第二百二十七話「恩のため」より引用

完結編ー家族と人生ー

決戦を終えたあとのお話です。子どもたちも大きくなり、ルーデウスは前世で死んだ年齢になります。それでも主人公は次の戦いに向けて準備をしています。戦いに明け暮れた長い日々を終え、世の中の裏方としてまた活躍するルーデウスの姿があります。蛇足編にもありますが、家族との幸せな日々や、困りごとなど、それはもうごたごたもあるのですが、彼はその生涯を終える時を迎えるのでした。

前世での反省から「調子に乗らない」「人のせいにしない」を心がけて何かあっても自分の悪かったところや相手の立場を考えて一方的に相手を悪く言うことをしないルーデウス。また、戦いにおける臆病さ、基本的に敬語での低姿勢で相手を敬う謙虚さ、すべてがルーデウスの個性でした。それは彼の人生においてもそうで、歴史の表に出ることのない形で他の人を持ち上げています。何より、家族をこの上なく大事にして決死の覚悟で仲間を募り、入念な計画で子どもたちの未来を守る姿は、まさに父親らしいと言えるのではないでしょうか。

「俺はもう、頑張らなくてもいいってことなんですかね?」

第二百六十一話「34歳」より引用

まとめ

  • なろう系とはファンタジー要素で非日常を過ごすような異世界物語などの総称
  • 無職転生は5年4ヵ月(64ヶ月)もの間、小説家になろうという投稿サイトのファンタジー部門で累計ランキング1位だった
  • ストーリーは異世界に転生した現代の知識や魔法を使って戦う設定のハイファンタジー小説
  • 幼年期からの一人の男の壮絶な人生を綴った一生涯の物語

パロディギャグや軽いノリ、エッチなところなどが女性に不向きな部分もありますが、それを差し置いてもとても素晴らしい作品です。むしろ、女性は男性はこんな風に物事考えるんだ?という視点でこの作品をみてもいいと思います。なろう系ラノベの金字塔だとか、パイオニアと呼ぶにふさわしい最高の物語です。

いちファンとしてのコメント

2020年アニメ化決定本当におめでとうございます。この作品は男性向きだといわれる側面がありますが、男としてよくよくわかる部分があります。多少の悪さやいたずら心がまさにダメで男らしいものだからです。生理的に受け付けない女性がいても仕方ないとすら思えます。それでいて、いまいちハッキリしないところがあったり、煮え切らない形のこともあるので原作は読む人を選ぶ作品だったかもしれません。

それでも常に努力する様が主人公のルーデウスの姿であり、「頑張れば報われることもある」ということを教えてくれます。だからこそ、彼は満足して未練なく、死ぬことができたのだと僕は解釈しています。

この記事を書くにあたり、久々に無職転生を読み返しました。あえてリンクは貼りませんが、第二百六十話「最後の夢」を呼んでいると涙が止まりません。こんなふうに安らかに眠れる人生を歩みたいものです。

さあ、あなたもぜひ無職転生を読んでみませんか・・・!!!

※ここでの紹介はネタバレ防止で省略されているところがあります。何卒ご容赦くださいませ。

アニメ関連情報

TVアニメ「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」詳細

スタッフ
原作:理不尽な孫の手
原作イラスト:シロタカ
原作企画:フロンティアワークス/発行:KADOKAWA「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」(MFブックス刊)
監督:岡本学
キャラクターデザイン:杉山和隆
プロデュース:EGG FIRM
制作:スタジオバインド

(c)理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会

TVアニメの制作は、「Re:ゼロから始める異世界生活」などで知られるWHITE FOXと、「ソードアート・オンライン アリシゼーション」など数々のアニメ企画に携わるプロデュース会社・EGG FIRMがタッグを組んで、本作の制作のために立ち上げたスタジオバインドが担当。監督は「ゲーマーズ!」の岡本学、キャラクターデザインは映画「空の青さを知る人よ」に作画監督として参加する杉山和隆が務める。

TVアニメ「無職転生」2020年放送!監督は「ゲーマーズ!」岡本学、アニメPVも解禁より引用

 


リンク集

原作:無職転生 - 異世界行ったら本気だす –

TVアニメ『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』公式サイト

『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』TVアニメ公式アカウント @mushokutensei_A

作者アカウント:理不尽な孫の手 @Magote_rihujin

関連非公式アカウント:『無職転生』に浸る人力BOT

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